New York 2009 日記(2/3)

 

7月29日 

 どしゃ降りの夜、ずぶ濡れでFreddy'sへ。 

 まずはタイコのセッティング。パールの3点だけど日本製ではなさそうだ。ペランペランなやつだけど乾燥しているせいか音抜けが良い。日本だったらこんな鳴り方はしないだろう。 

 嫌な予感が、シンバルが見当たらない。この時点で俺は自分に言い聞かせた「諦めな!」 

 やはりずぶ濡れであらわれたブレイスに確認してもらうとシンバルは最近盗まれたらしい。シンバルを盗むようなやつに良いタイコが叩けるとは思えんけどなあ。しかたがねえ、今日は譜面台ドラマーだ。シャベルよりは多少鳴る感じだけど、トホホだぜ。 

 ギターのステンは速弾きでなかなか面白いんだけど、とにかく落ち着きの無いやつで演奏中も歩き回ったりする。突然音がしなくなったので、なんやなんやと思って見ると、遠ざかりすぎてシールドがアンプから抜けたのだ。ぷ~! ハイテンションで面白いやつだ。このライブはステンがブックしたらしい。昔の奥さんが日本人だったらしい。「はなからぎゅうにゅう~」だと。 

 帰り道は雨が上がってさわやかだ。 

 

7月30日 

 ブレイスの誘いでMoMA見学。なんでもブラジリアンナイトで中庭で音楽と酒が楽しめるとのこと。

 まずは館内の見学。特別展の画家のはつまんなかった。常設展の5階へ、ミロ、ピカソ、マチス、クレイ、ブラック俺の好きなのばかりだ。ぞくぞくするぜ。大好きなカンディンスキーも4枚あった。あの有名なダリの“グンニャリ時計”もさりげなく掛かっていて驚いた。 

 4階はアンディーウォーホールとかでまあ普通。3階の半分位まで観て中庭へ。ブラジル音楽ってわりに生ギター1本でせこーくやっている。グラスワインたのんだら8ドルもしやがんの。安い酒屋だったらボトル2本買えるぜ。 

 俺には5階だけで充分だ、金曜日は4時から入場がフリーになるので明日も行こうかなあ。

8月1日 

 イーストビレッジをひとあたり。日本の飲み屋(寿司、焼き鳥、ラーメン)とタトゥー屋だらけだ。寿司を少しつまんだけどなかなかだった。まあ日本人がやってるからなあ、いつかウィーンで食べたのに比べたらまったく良い。

 古着屋でTシャツ、Sサイズがピッタリ。 

 帰りはビレッジまで歩いてブルーノート詣り。年配の人達が並んでいた。 

8月2日 

 寿司屋でもらった日本語フリーペーパーを見ていたら日本人天才子供ギタリストの演奏が昼過ぎにあるらしい。どうせ曲芸的見せ物なんだろうけど、せっかくだから行ってみるか。またもやどしゃ降りの雨でずぶ濡れ。住所をたよりに行ったけどまったく気配なし。警備に聞くと雨で中止になったらしい。こちとらずぶ濡れで聴きに来とるっちゅうんじゃ。プロだったら雨くらいでやめるんじゃねえ。

 ちょうど雨宿りできるスペースがあったので止むまで待って散歩。15~20丁目の一番西側。高架鉄道跡が遊歩道になっている。昔はかなり危険なエリアだったらしいが落ち着いた良いところだった。 

 夜はC.O.M.A.へ。ブレイスのトリオCrime Sceneが良かった。ニューヨークに来て初めて熱いフリーミュージックを聴いた。編成はsax,guitar,drumsなのだが特にギターが良かった、カースティンはドイツ人らしい。タイコのボブおじちゃんはタイコのコレクターらしい、この日使ったのは50年代の18インチグレッチグレー下敷きのピッカピカ、ペダルなんかもオールドカムコの本物だ。セッションタイムに叩かせてもらった。これぞグレッチって感じ。あるところにはあるものだ。 

8月4日 

 クニさんはブライアントパークのピアノ弾きだ。日本人だと思う。本人はそんな事は思っていないんだろうけどなぜかもの悲しい。芸人の悲哀ってやつか。ピアノもホンキートンクだしね…だけどなぜかその場を去りがたく最後まで2時間近く聴いていた。 

 夜は行った事の無い店に行ってみようとブルーノート近くのZincBarに行ってみた、看板を見るとブラジリアンジャズって書いある。ちょっとのぞいたら生ギターが2本見えた。これは俺向きじゃないね、やーめた。やっぱりStoneに行こう。これが大間違い。タイコ、ベース、サックス、トロンボーンのカルテットだったけど1時間半位の間でまともに楽器として音を出したのは10分間位。後はチロリン…こちょこちょ…プピッ…。タイコのやろうなんかスネアをひっくり返してスナッピーをシュッだって。んじゃドラムなんかセットしなきゃ良いじゃん。最後にはスティックをフロアタムに突き刺してわざとヘッドを破いたりガーンって倒したりした。狂気って事では理解出来るけど音楽表現としたらどうなんだろう、俺には理解不能なフリーだった。おまけにエアコンが無くて多分客の方が汗をかいていた。あーあ、ブラジリアンにしておけば良かった。 

8月5日 

 ブレイスと103丁目のスタバで待ち合わせてギターのDom Minasiさんのお宅にてセッション。アパートなんだけど部屋がいくつもある立派なところだ。なにより普通に音が出せるのがすごい。タイコはスネア、16キック、10タム、16シンバル、特製ハイハット、特製というのは普通のシンバルを小さくカットしてハイハットにしているのだ。いずれにせよたいしたものではないけど、ペダルとスタンドが年代が判らないほど古いグレッチなのには驚いた。昔からいろいろなミュージシャンと交流があった事を物語っている。しかし、シンバルが有るって良いの~!   

 Domさんのギタープレイは“旦那、年期入ってますねえ~。”って感じ。3Takeやって休憩。キッチンでコーヒー。しかしアメリカンどうしの会話は全然解らん。つまんなくて居間に飾ってある写真とかを見ているとDomさんのレコードジャケットが、なんとレーベルはブルーノートだった。そういえばさっきいただいたCDはニッティングファクトリーでのライブ録音だった。なんだかすごい人なんじゃないの~?

 もう1セットやって失礼した。 

  ジョンスコがフリーコンサートをやるというのでマジソンスクウェアパークに行ってみた。1曲だけ聴いて帰って来た。 

8月6日 

 DomさんのCDで思い付いてニッティングファクトリーに行ってみる事にした。有名だからガイドブックにもバッチリ載っている。なんだあ楽勝だあ、とか思って行ったんだけど無いんだよこれが。通りも番地も合っているのになぜ?1ブロック歩いたけど見つからない。振り出しに戻ってキョロキョロしていると2軒隣に身なりの良い黒人のドアマンが。あの~ニッティングファクトリーって知ってますか?ってきくと、指で首切りサイン。エー!なくなっちゃったんですか?と問うと去年の9月に移転したとの事。何処にですか?その答えはなななんと俺の天敵、ブルックリンだった。トホホ…

 お前は日本人か、と言うので、そうだと言うと日本語で言いたい事があるので教えてくれと言う。What are you doing tonight ? 初めは真面目にWhatがnaniでyouがkimiでtonightがkonyaでとか携帯画面でやってたけど覚えも悪いしめんどうでいい加減な日本語にしておいた。どうせナンパに使うんだろ?意味不明で振られてしまえ。

 オリバーレイク、レジーワークマン、アンドリューシリルのTrio3をもう一度ちゃんと小屋で聴きたくてBirdlandの23時の部に行った。へー、ここがあのバードランドかあ~、ってすっかりお上りさん。かなり広くて小綺麗だ。1ドリンク付きの$30。まったく文句無し。ブルックリンラガーもあるし。 

 演奏はすべて譜面有りでやっていた。1,2曲目は譜面のサイズどうりにお上手に、3曲目がオリジナルなんだけどブルースだ、タイコが一気に自由になった。やっぱそういう事なんじゃないの~?いろんな事を決めない方が良いんだよ。4,5はほとんどクラシックの現代音楽風、短くてたすかった。6は譜面は有るけどほとんどフリー、良かったけどタイコのソロがつまんなかった。1時間程のステージだった。ゲストの黒人女性ピアニスト、ゲリアレンがとても良かった。やはりこんな演奏はニューヨークのジャズカフェやジャズレストランでは出来ない事だろう。 

 ドリンクは追加しなかったので$1をカウンターに置いて退席。 

8月7日 

 Crime Sceneを聴きにYippie Cafe & Museumに。芸術とパフォーマンスのラボのようなところでソフトドリンクはあるけどアルコール無し。たぶんアルコール販売のライセンスが無いんだろう。入場$5。 

 やっぱカースティンは良い。使っているのは箱ギターなんだけどエフェクターは使わない。なんだかいさぎ良いやつだ。クラシックのCDなんかも出しているような人なのでそれなりの考えがあるのだろう。 

 タイコのボブさんは3点はいつものグレッチだけどスネアが木のフープ付きの俺にはメーカーさえわからない優れものだった。さすがにコレクターだ。

 ブレイスが来週カースティンとトリオをやらないかと言ってきた。望むところじゃー!場所を聞くと一番始めに音を出したブルックリンのあの店だった。ふ~、また苦労してタイコをセットするかぁ。 

 ブルックリンに始まってブルックリンに終わるかあ~、有り難いこって。“I love Brooklyn”とかってTシャツがあったら絶対買うもんねー。

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