New York 2009 日記(1/3)

 

Shiro in NewYork

 

7月13日 アメリカ到着 

スーパーに食料とビールの買い出し。スーパーにはビールはあるけどきつい酒は無い。まあ我慢するかあ。しかしレジのお姉さん達の会計のスピードは凄い。皆、買う料が半端じゃないからなあ。アメリカ初アルコールはビール。 

 

7月14日   

無理矢理起きて外出。明日、旧友小野 紳と待ち合わせしているジャズクラブ“55Bar”の下見。なんとか見つけてそのまま散歩。グリニッジビレッジなんだけどこの辺はゲイの人達が多いらしい、新宿2丁目だね。ゲイショップのドアにもたれかかったおやじににっこりされた。ヒィエ~! 

 ぶらぶらしていたらワシントンスクウェアに着いた。噴水では子供達が水遊びしている。ベンチでぼーとしていたら何やら楽器の音が、ジャズだ、しかもかなり真面目に演奏している。いっちょ聴いてみるか。近づいてみるとペットのトリオだ。皆上手い。ベースのやつが演奏中に楽器を倒して入れ物を持って廻ってくる、1ドル札を投げ込んだ。タイコがバンマスみたいで“グリーンドルフィン”を5拍子でやったりしたけど、なんだかなあ。

 タイムズスクウェアのインフォメーションセンターに廻って地下鉄、バスの路線図をゲット。

 とにかく眠い。 

 

7月15日

 これが時差ボケってやつか、食欲も無くただただ眠い。夜の9時まで寝た。ヨーロッパでは感じたことの無い感覚、どうもボケは地球の東方向がきついらしい。

 55Barを覗くと紳ちゃんが手を振っている、昔のままだ。懐かしい。チャージが$10でビールが$6ミニマムが2、ブルックリンラガーってのを試したがなかなか良い、ベルギービールみたいだ。

 バンドはアルトがバンマスのカルテット。リズムセクションは良いけどアルトがなあ。ベースは速弾きが得意でペデルセンを想わせる、あのヨーヨーマのCDにも参加した事があるらしい。ほとんどがオリジナルで譜面でやっている。仕掛けもバッチリだけど、それが?って感じ。最後から2曲目がなんと“酒バラ”だった。なんでや~?俺達日本人にサービスか?今までの雰囲気を全部ぶち壊した。ニューヨークに来る日本人ミュージシャンが勘違いするのが良く解る。

 

7月17日 

 7番街のドラム専門店に行ってみた。スタッフも楽器の事を良く知っている。良いなあと思ったのはコンスタンチノープル20インチシンバルとオールドグレッチ18,12,14,スネアのセット。恐る恐る値段を聞いてみた。するとシンバルが$410でセットはなんと$13,000だった。高いけどあの状態での値段だったら文句無いね。だれか俺に買っておくれ。後は別室でグレッチの125周年記念特別仕様非売品なんてのも拝ませてもらった。一番奥にひっそりと小綺麗なオールドロジャース18の3点が積んである。「あれ、いくら?」「あれも売れないなあ。」トホホ…でもなんだか久々に良い楽器が見られて嬉しかった。ドラマーにとっては天国だ。

 リバーサイドパークに行こうと思って歩いていたらセントラルパークに着いちゃった、まったく逆だよ。おかげでダコタアパートは見られたけど。悔しいからリバーサイドまで歩いた。両方の公園の水飲み場で水飲みまくり。   

7月18日 

 ジョンゾーンが持っている“The Stone”へ。ニューヨークでアバンギャルドを演っている数少ないスペースらしい。只のスペースで飲み物も何も無い。早めに着いたので近くのバーでビール。一体いくらするのかドキドキだったけど$5でホッ。おまけにカウンターのお姉さんは日本人だった。

 演奏は黒人のタイコのおっさんのトリオ。あとはターンテーブルとチェロ。全曲打ち込みのパターンで始まる。チェロはあまりいっしょに演っていないらしく譜面を見ている。アンサンブルもいまいちだ。スタンダードジャズを聴くより落ち着くけどなんだかなあ、たまにはリズム無くしてくんないかなあ、て言うか汗かくまで演ってくんないかなあ。

 

7月19日 

 知り合いのブレイスシブラが主宰するC.O.M.A.へ。道に迷ったのでなるべく優しそうな人に聞こうと思い優しそうなお姉さまに聞いたら本当に優しかった。ありがとう。

 ブレイスとは2年振りの再会だ。何か飲むか?というので、ビールが良いと言うと、銘柄をきくのでブルックリンラガー!ちなみにブレイスが自分のために買ってきたのはサッポロだった。

 C.O.M.A.がニューヨークで一番フリーな場所かもしれない。この日まずはエフェクトされた鉄琴&シンバルというセットのソロ。だいたい静かに演奏するんだけど興奮してガチャガチャってやるのが良かった。そうでなくっちゃ。次はギターのデュオ。ただ綺麗なだけ。CDも出しているらしく多少金の臭いがした。最後はオープンセッション。日本人の女性ボイスも居たけど、スーザフォンを担いできたお兄ちゃんには驚いた。しかし皆日本人みたいに熱くはならない。握手はしますが殴り会ったりはしませんよ、て感じ。 

7月20日 

 ニューヨークジャズのフリーペーパーを調べていたら凄いのを発見した。オリバーレイク,レジーワークマン,アンドリューシリルのトリオ。しかもでかい本屋でやるらしい。値段が書いてないからもしかしたらフリーかも。

 1時間前に会場に着くとまだ誰もいない。本屋の中をぶらつく、こっちの人は立ち読みじゃなく座り読みなんだね。 

 会場に戻るとちょうど開場するところ。「入っても良いんですか?」「どうぞ。」やったー!しかも思ったとうりフリーだ。かぶりつきに陣取る。30分位の間に150位の席はいっぱいだ。ちょこっとMCがあってすぐに演奏だ。オリバーレイクが吹いて次がレジーワークマン、そしてアンドリューが加わった。皆の生音がとても良い。レジーワークマン節も健在だ。3曲しか演奏しなかったけど充分だぜ!ありがとう、ジャズの大人達。まったくフリーだ。 

 帰ろうとしたら突然声をかけられた「大沼さんですよね?」ありゃー麻衣子じゃねえか。永年世話になった大分のジャズ屋“ネイマ”の娘だ。今はドラマーとしてニューヨークで活躍している。麻衣子が話しに行こうというのでレジーとちょこっとお話。お前はどんな音楽をやっているんだ?って言うからフリーフォームです、って言ったら「グレート。」だった。その後アンドリューに13年前にドイツで会いました、と言ったけどまったく覚えていなかった。しかしオリバーレイクのバリバリさには恐れ入った。凄い! 

 オリバーのトークというか朗読がとても良かった。

7月22日 

 28日に見たいコンサートがあるワールドファイナンシャルセンターの下見。行ってみるとあのワールドトレードセンターのほぼ隣だった。あの雰囲気はまだ充分残っている。川沿いの出口から出て散歩。川風が気持ち良い。遠くに自由の女神が見えた。

 フリーペーパーを見ていたらAkikoなんとかって日本人らしいのがあったので行ってみた。グランツトムってひょっとしたらグラント将軍の墓?Akikoさんはオルガニストだった。ギター,サックスというお決まりのスタイルでカッコ良くやっていたけど、音が解りやす過ぎて気持ち悪い。ハーレムジャズフェスのいっかんらしく黒人でいっぱいだ。しかし路上じゃないんだからビールくらい売れば良いのに、無粋なやつらだぜ。 

7月23日 

 ついにアメリカ初ライブの日だ。夕方ブレイスと待ち合わせてお宅へ。食事をいただく。サラダ、チキン、パスタ、おいち~!奥さん料理上手。 これが今度C.O.M.A.でおまえが使うスネアだとブレイスがきったねえやつを持って来た。さっそく分解掃除、メーカーも判らない物だがラディック系5インチで筋は悪くない。ヘッドも替えてやりたかったけど仕方がない。組み立てたら皆拍手だった。 

 22時位に現場へ。DJ&ラップのバンドが演奏している。ブレイス、本当にここ?ビールやっつけながら見ていると次は男子二人組のフォークソング。ブレイス、本当にここ?タイコをセットしようとステージに行ったけどまともなものがひとつもない。ガラクタ置き場のような倉庫をあさってなんとか音が出るようにした。ブレイスはあそこのドラムはファニーだと言っていたけど、限度ってものがありますぜ。

 ガッツーン!て音を出したら20人位いた客は誰も居なくなった。田舎の若者が集まって騒いでいるだけの田舎の飲み屋だった。 

 夜中に帰ろうとしたら乗り換えの駅が閉鎖されていて逆戻りして出直し、ブルックリンなんか嫌いだ。

 

7月25日 

 ブルックリンウォンバットスタジオでレコーディング。きったねえスタジオだけどおやじの腕が確かなのは感覚でわかる。 

 タイコは基本的には古いグレッチだがフロアは別だ。いろいろなタイコがあって好きに使って良いとのこと。スネアも10台位あってオールドグレッチ5インチとオールドラディック5インチを迷う。結局20グレッチキック、13グレッチタム、14不明フロア、グレッチスネア、22イスタンブールトップを選択。 

 ブレイスもなかなか調子が良くて汗だくの2時間だった。 

 ビールが飲みたいと言うと、今度演奏するFreddy'sへ行こうと言う。こんな昼間にやっているの?カモン!やっていた。冷え冷えのバドをグビー。しかしカントリーがかかっているまったくのアメリカンバーだ。こんなところで演奏したらブルースブラザース状態になっちゃうんじゃないの?演奏するところは別室になってるからまあいいかあ。 

 帰ろうと駅に行ったらなんと乗るべき電車のホームが閉鎖されている。別のホームに電車が来たので近くにいた黒人のお兄さんに「これマンハッタンに行く?」てきいたら反対側を指さされた。ブルックリンなんか… 

 

7月26日 

 C.O.M.A.の日だ。とにかくスネアひとつしかないという乱暴な状況だ。イスを組み合わせてスネアをセットしようかとしているとブレイスがどこかからスタンドを探し出して来た。ラッキー!すると対バンの電子パーカッションのマット君が「これ使えない?」と持って来たのはシャベルの頭だった。俺がシンバルが無いのを知って探してくれたのだ。よーし使ってやろうじゃねえか。叩いてみるとカウベルみたいでなかなか良い。泥だらけだったので洗おうと手にするとマット君が「やっぱりだめ?」て言うので「洗うんだよ、ありがとね。」マット君はカリフォルニアから来たらしい。良い子だ。CDを交換したりした。 

 シャベルで演奏していたらなんだか気持ち良くなっちゃって演奏後は「俺の事は“シャベルドラマー”と呼んでくれ。」とか言っていた。 

 演奏後は近くのシラーズバーへ。ワインのリストが面白くて、“安いの普通の高いの”もちろん安いやつのでっかいやつー!

7月27日 

 ブレイスの家で先日の録音のレベル合わせ。 

 サックスにはマイクは1本だけどタイコにはマルチの他にオーバーヘッドが2本で計7本。あーめんどうくせー。全部エアーにしておくれよう。なんとか形にするのに5時間近くかかった。

 この日ははじめて問題無くブルックリンから帰る事が出来た。

 

7月28日 

 ハーレムをひとあたり。 

“The National JAZZ MUSEUM In Harlem”て言われりゃ気になるよね。行ってみた。とんでもなかった。普通なビルの2階で恐る恐るドアを開けると白人のじっちゃんが。入って良いですか?と言うと、どうぞどうぞ!なんだか付きっきりで説明してくれるんだけど、あるのはジャズマンの写真が20枚位だけ。あのー俺も知ってますけど、じっちゃん。サインしろと言うのでノートをみると俺が3人目だったけど、はたして今日の3人目なんだろうか。

 あのアポロシアター見物。思っていたよりきれいだった。 

 KingなんとかってやつがSun Raをセレブレイトするというのでワールドファイナンシャルセンターへ。下見のかいあってなかなか良い席に座れてわくわくしていると始まったのは超くだらないDJだった。おまえ本当にサン.ラ聴いたことがあるのか?イスを蹴飛ばすように退席。 

 帰りはビレッジで酒。まったく頭にくるぜ。